海外の怪奇な話、都市伝説、オカルト話を翻訳してみる。(This website includes English translations of Japanese urban legends, scary tales and strange stories.)
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1923年4月12日
こうやって記録を書くのはもうそろそろ終わりにしたい。Keating先生は起こったことすべてを書きなさいと言ったけど。でも話は最後まで書くつもりだ。それが私のなすべきことだから。私のプライドってやつね。
身を切るような寒さの、風の強い秋の一日。日付もまだよく覚えている。1918年10月5日。Lizzieと私は、おじさんの畑の後ろの森の中で、かくれんぼ(hide-and-go-peek)をして遊んでいた。私は15歳でLizzieは12歳だったから、彼女はわがままを言って自分のやりたいようにしてたわね。Lizzieがしつこくせがむものだから、私は折れて、私が鬼をやることになった。彼女は隠れるのが大好きだったのよ。
目を手で隠して、甘い匂いのする大きな樫の木に向かって立った。100まで数えてから、彼女を探しに行った。
今思うと、すぐに「サイン」に気付くべきだった。それまでずっと東から吹いていた風がすっかり止んでいて、私の足音以外には、森の中に全く音がしなくなっていた。私は、まだ誰にも踏まれていない、乾いた落ち葉で埋められた地面を一歩一歩進んでいった。森の奥へと歩き続け、ときどきLizzieの名を呼んだ。返事はなく、終わりのない静寂と静止した木々だけが私を取り囲んでいた。歩き続けていると、周りの木は、大きくてがっしりした樫から、細くて背の高い木に変わっていった。
このとき奥へ進むのをやめるべきだった。エドおじさんの家に帰るべきだった。でも私は進み続けた。
歩きながら、妹の名を呼んでいた。すこし困惑し始めていたわ。いつもはLizzieを見つけるのに5、6分もからなかったから。背の高い木々が私を囲み、霧が少し出始めていた。そして、私の記憶に永遠に刻み込まれることになる一連の出来事が始まった。
突然、「ドロシー!」という私の名を呼ぶ声が聞こえた。甲高い声で、息遣いが荒かったけど、間違いなくLizzieの声だった。私は走り始めた。冷たい空気が私ののどに突き刺さって、息をするのが苦しかった。
霧はすごい速さで濃くなっていったので、周りを見ることも難しくなってしまった。そのとき、どういうわけか、大きな木の陰に隠れなければいけないという衝動に襲われたの。私はすぐに木の後ろに隠れて、Lizzieの姿を探しながら霧の中をじっと見つめた。
震えながら木の陰に座っていたけれど、どのくらいそうしていたか分からない。そしたら、とても背の高い人の影が霧の中にぼんやり現れた。お父さんの友達の銀行員みたいにスーツを着た男の人に見えた。ただ、その男は7月4日のパレードの時みたいに竹馬に乗っているように見えた。彼はとても背が高くて、頭が木の枝をこすっていた。わけが分からなかったのは彼の腕だった。彼の腕…!それは野放しのホースみたいに、あるいはエンジンをスタートさせるクランクみたいに、うねうね蠢いていた、とてもゆっくりとね。私には、他に形容の仕様がないわね。この……「男」は、腕をゆっくり波立てながら、長いこと霧の中に立っていた。この男を見ている時、見てはいけないものを見てしまっているという奇妙な感覚に襲われたわ。
彼をじっと見ていると、私が彼を見ているのではなく、彼が私を見ているのだ、いや私の内側を見ているのだという変な感覚を覚えた。それから、彼の頭の部分がちょっと変なことに気付いた。それは動いているようだった。まるで……まるで…、顔があるべき部分に蜂の群れがいるようだった。まるで彼の頭と体は別の場所にあって、頭のほうは身体の部分にまだ追いついていないかのようだった。それがとても怖くて、Lizzieのことはすっかり忘れてしまっていた。
それから、その背の高い男は姿を現した後すぐに消えてしまった。霧の中にすーっと消えてしまった。彼が立っていた場所の近くで誰かがすすり泣く声を聞いたのはその時だった。私は声のほうへ歩いた。私の足ではなく別の何かが私を前に押し出した。この時のことはよく覚えていない。落ち葉の中に横たわっていた、Lizzieの所へ歩いていったのは覚えている。私の手は何か固くて重いものを掴んで、それを頭上に掲げた。そのあとは真っ暗になって何も覚えていない。
私が意識を取り戻したのは、エドおじさんの家の台所だった。椅子に座っている私を、お父さん、お母さん、エドおじさん、そして警官が取り囲んでいた。私はいろいろ質問されたけど、その時の彼らはまるで動物園の虎でも見ているかのように私を見ていた。私は危険な存在であるかのようだった。どうやら私はLizzieの頭を石で殴って殺したのだった。自分のしたことについては全く覚えていない。これについて考えるのはいまだに難しい。でもそれが今、私がSunnyhavenにいる理由なんだろう。あの背の高い男はいまだに夢に現れる。彼を追い払えるようにKeating先生に助けてほしい。PR